CASE 02 実践事例紹介 江戸川学園取手小学校
思考の時間を大切にする、デジタル教科書活用
〜江戸川学園取手小学校〜
その1
江戸川学園取手小学校(茨城県取手市)では、2014年の開校当初からICT活用に力を入れ、現在は3年生以上の全児童が1人1台のPCを所有して毎日の学習に役立てています。国語科の学習者用デジタル教科書+教材(以下「学習者用デジタル教科書」という)は2017年度から一部の学年で試用を始め、2020年度からはPCを所有する3年生以上の全児童で正式導入。活用を重ねてきた同校ではどのような授業が行われているのでしょうか。
デジタルもアナログも一緒に使う
5年2組では、国語科5年生担当の小仲井健太先生が、説明文『見立てる』の授業を行っていました。この時間は、教材文の「中」にあたる段落の内容を詳しく読み、内容を捉えました。始業時に子ども達はさっとPCを開き学習者用デジタル教科書を表示。先生は黒板に直接PC画面を投影し、必要な板書があれば投影したまま行うスタイルです。
この時間に学習する重要なポイントについては先生の板書を元にノートをとります。紙のノートに手書きするだけではなく、PCの文書作成アプリでノート作成をしても構いません。子ども達はそれぞれが使いやすい方法を選んで使用しています。
抜き出しはマイ黒板で効率よく
朗読はデジタル教科書の読み上げ機能を使用し、先生がクラス全体に流しました。小仲井先生は、「私が読むと子ども達は『先生が教科書を読んでいる』という頭で聞くんですね。収録されている音声の方が、話の世界に入りやすいのではないかと感じています」と、その利点を説明します。
マイ黒板を使って、先生は子ども達に問いかけながら段落ごとのポイントを整理していきます。本文から抜き出した言葉を並べ、配置を換えたり線で結んだりして関係性を表現しました。子ども達も同じように自分のマイ黒板にポイントを整理しました。
手書きで書き写し、整理するとなると時間がかかりますが、マイ黒板での作業は簡単で比較的短い時間でできます。「私と同じ画面を見ながら同じ操作をすれば同じことができるというのは、書くことに時間を取られてついてくるのが大変な子ども達にとっては、非常にやりやすいと思います」と小仲井先生。
デジタルとアナログをバランスよく授業設計
マイ黒板でのまとめは、いわば情報整理のメモ。これをもとに段落ごとの要旨をノートに書きます。小仲井先生は、あらかじめ手がかりとなる問いを板書していましたが、正答は書かずに子ども達の考えに委ねていました。
「抜き出すことは単純な作業としてデジタル教科書のマイ黒板で行い、それを材料に自分で思考する部分はノートに書くというように切り分けました」と小仲井先生。デジタルで作業効率を上げる部分とあえて紙のノートを使う部分とのバランスを考えながら授業を設計しています。
読書ノート作りにマイ黒板が活躍
6年3組では、国語科6年生担当の内丸友之先生が、「『ブッククラブ』をやろう」をめあてに授業を行っていました。「ブッククラブ」というのは、テーマとなる本を読み、その本について楽しく話をすること。本を読むときには、どんなことに注目したら良いかを確認した上で、読書単元『森へ』を読み進めました。
同校では、これからの社会で活躍できる力を身につけるために、様々な学びを用意し「10の特色」として掲げています。その一つ「思考力の源となる国語教育」として特に読書指導に力を入れています。日頃から読書の機会を多く持ち、読んだ本の記録を掲示したり「読書貯金」という冊子にして保存したりする取り組みを行っています。また、内丸先生は「本を読むときにつかう7つの方法」(内丸先生作)を配布して、子ども達が優れた本の読み手になれるよう指導しています。
この時間は、『森へ』を題材に、ブッククラブの準備となる読書ノートを作成します。読書ノートには、質問したいことや、自分の経験などとつながるところ、大切だと思うところを抜き出してメモします。ここで活躍するのがマイ黒板。文章を読みながら気になるところをマイ黒板で抜き出して、マークをつけながら分類していきます。
内丸先生は朗読しながら適宜子ども達に問いかけます。抜き出し方を例示し、生物の名前が出てきたらデジタル教科書に収録されている写真資料を見たり、筆者についてインターネットで調べたりして、外の情報に意識を広げていく工夫をします。
子ども達は自分の基準で様々な部分を抜き出し、授業の最後にはペアでマイ黒板を見せ合って考えを共有しました。
現在の6年生は4年生の頃から1人1台のPCを使用していて、すでに3年目。デジタル教科書の扱いも、PCを使いノートをとる子ども達の姿もとても自然です。
自分に合った使い方がわかっていて、自分で手段・方法を決めている様子が伝わってくる授業時間でした。