CASE 02 実践事例紹介 江戸川学園取手小学校
思考の時間を大切にする、デジタル教科書活用
〜江戸川学園取手小学校〜
その2
江戸川学園取手小学校のICT環境整備と活用について、ICT教育推進部で国語科5年生担当の小仲井健太先生と教務部長で国語科6年生担当の内丸友之先生にお話をうかがいました。
ICTは国際社会に生きる子ども達に必須の環境
――ICT環境の整備と学習者用デジタル教科書の利用状況を教えてください。
小仲井教諭(以下、小仲井):2014年に開校した本校では、「心豊かなリーダーの育成」を教育理念に、グローバル社会に貢献できる人材育成を目指しています。小学生のうちからICTを当たり前に使うことは、これからの世界で活躍する力を育むのに必須だと考え、ICT活用に力を入れてきました。最高学年が4年生になった2016年より、4年生以上で1人1台のPC活用をスタートし、2021年度からは3年生以上に活用を広げました。国語の学習者用デジタル教科書は2017年より試用していましたから、もう長く使っています。
――先生方は国語科ということですが、教科担任制なのでしょうか。
小仲井:本校は全学年が教科担任制で、国語科では1人の教員が同一学年全てのクラスを担当します。学級担任制に比べると、教科ごとのICT活用を展開しやすい環境かもしれませんね。国語科では3年生以上で学習者用デジタル教科書を使用していますし、理科でも学習者用デジタル教科書を使い始めました。
――子ども達がPCを扱い慣れていますね。ノートをとる際に、紙のノートを開く子もいればPCを使う子もいたのが印象的です。
小仲井:それがまさに本校のICTの考え方なんです。PCを子どもにとっての筆記用具の一つとして捉えていて、紙でもデジタルでもどちらを選んでも良いということを基本にしています。「私は紙の方がやりやすいな」「デジタルの方が便利でしょ」という個々の感覚を大切にしています。
作業スピードが上がり、考える時間を確保
――学習者用デジタル教科書を使用してどのようなメリットを感じていますか?
小仲井:なんと言っても子ども達の作業スピードですね。例えば教科書の中から大切なところを抜き出すという場合、通常は手書きで書き写すしかありません。学習者用デジタル教科書を使えば、本文をなぞるだけでマイ黒板に抜き出すことができます。
内丸教諭(以下、内丸):抜き出した後に動かせるのもいいですね。順番を入れ替えて検討したり、分類したりするのに便利です。
――作業スピードが上がって生み出された時間は何に活かされているのでしょうか?
小仲井:その時間を個人の考えを表現することに当てたいと考えています。ただ黒板を書き写したり、先生に指定されたところに線を引いたりするだけで終わってしまう授業では、国語力は育たないと思うんですね。作業時間を短くすることで、提示された材料をもとに子ども達が自分の頭で考えて表現する時間を確保できます。このアウトプットの時間は、デジタル教科書なしでは作れません。
大切なのは「伸ばしたい力」
――国語科として手書きを重視する声もありますがどのように捉えていますか?
小仲井:国語は教科で育む力が本当にたくさんあり、文字を書く力、読解力、説明する文章を作り上げる力など様々です。手で書くことで得られる能力もあると思いますし、きれいに文字を書く力はPCでは身につきません。ただ、私は限られた授業時間の中で、書き写す力よりも、自分の考えを言葉にできる力と文章を構成できる力を伸ばしたいと考えています。そのためには、子ども達が速く正しく筆記できる道具を選んだ方が良いと判断しています。
内丸:国語科は言葉の教科なので、ノートをとる時に黒板を写真で撮るのは駄目ということにしていますね。手で書くかPCで打つかを選択するように指導しています。手書きよりもPCを使う方が集中力が増して明らかに学習効率が上がっている子もいます。
小仲井:文字を書くことが苦手な子というのは一定数いて、その子達にとって書き写すことはかなり重労働でそれだけで心が折れてしまうんですよね。
――丁寧に書くという力は漢字の練習や書写の時間につけるという分け方ができそうですね。
小仲井:そうですね。この学習内容でつけたい力は何か、そのためにどの道具が良いかを考えるので、手書きが絶対、PCが絶対ということではありません。
内丸:漢字指導は手書きです。授業のはじめに漢字の小テスト、漢字の音読と空書きを行っていて、1月に漢字検定を受けられる進度で指導しています。
小仲井:私は作文を書くときは手書きよりもPCで書くことを推奨しています。作文指導で一番つけたい力は、文章構成を考え、正しい文章を書くということです。手書きでは、書き直しにとても時間がかかりますが、PCで書くと子ども達は気軽に編集できるので、どんどん良いものにしていくことができます。それでも、どうしても手書きでやりたいという場合は手書きで書くのも自由にしています。
子ども達が、手書きでもデジタルでもこだわりなく使う姿を支えているのは、先生方のICTを筆記用具のように当たり前に使うという考えでした。授業でどういう力をつけさせたいかを判断し、デジタル教科書とノートに書くことのバランスを考えるという視点は、授業設計に悩まれている先生方にとって1つの参考になるのではないでしょうか。